羅針流「体験型」の旅

[テーマ性のある旅]
学ぶ旅

世界各地で楽しめるその地域ならではの文化や語学を「学ぶ旅」は、自分自身を高めるのにもってこいの旅。現地で学校に通うことで友人もできるので、ひとりでも出かけやすい。さらに明確な目的があるため、充実した海外生活を楽しめる。羅針NAVIでは、学ぶ旅の基本である「英語を学ぶ旅」をご紹介。

[学ぶ旅]Chapter.1
トロントで英語を学ぶ

バラエティに富んだ民族が共存するトロントは、さまざまな文化にふれられる、英語が母国語でない人の英語もみんな一生懸命理解してくれようとする、治安がよい、交通の便がよい、街が清潔であるなどといった理由から、羅針世代におすすめの街。 実際にトロントで語学学校に通う日本人女性にインタビュー。入学してから1か月の生活ぶりとは。

若者ばかりのクラスメート 話してみればわかりあえた

いつかは海外で暮らしてみたい、そう夢見る人は多いだろう。橋口節子さんもそのひとりだった。高校卒業後、英語の通訳ガイドの専門学校に通っていた当時は「ナニー(子守り)をしながら外国で暮らしたい」、そんなことも考えていた。しかし結局、専門学校卒業後は一般企業に就職、その後は結婚、子育てと、時間はあっという間に過ぎていった。

そんな橋口さんが、30年ぶりに心の奥底にあった夢を実現させたきっかけは、2006年4月に勤め先を退職したことだった。次の仕事をはじめるまでのつかの間の「休息」を利用して、昔の夢を実現しようと考えたのだ。

1時間目の授業では前日見たアニメについて、グループで討論し、発表しあう。

「よし、留学しよう! と決めて、すぐにインターネットで留学情報を集めました。最初はアメリカを希望していたんですが、インターネットで見つけた留学斡旋会社から、治安がよく、物価が安いカナダをすすめられて。できるだけたくさんの経験をしたいと思ったので、カナダ最大の都市であるトロントを選びました」と橋口さん。30年ぶりに叶える夢を、家族もみんな応援してくれた。

実は橋口さんにとって、このカナダ留学がはじめての海外旅行。「あまりにも急に決めたので、不安を感じる暇もなかった」といい、ガイドブックを買ったのも出発の2日前。「行けば何とかなる。大丈夫」と日本を発った。

ランチはホストマザーがつくってくれたサンドイッチとバナナ。ホッとくつろぐひととき。

トロントではインターナショナル・ランゲージ・スクールズ・オブ・カナダという語学学校に入学。初日に受けたクラスわけのテストの結果、4段階ある初級のうち、一番上のクラスに入った。午前中は9時から12時まで基礎的な会話、午後は1時から2時30分まで実用的な会話のクラスで学ぶ。クラスメートは南米や韓国からの人が多く、ほとんどが20歳前後の若者だ。

「若い子は服装もハデだし人前でも平気で抱擁やキスをするし、正直いってはじめのころは、随分チャラチャラしているなと思いました。でも授業中や放課後に頻繁に話すようになってみると、みんな自分の将来や国のことをしっかり考えている。今ではたくさんの若者とメールアドレスを交換して、『帰国しても連絡を取り合おうね』と約束しています」

とても明るいホストファミリー 心あたたまる交流が楽しい

橋口さんのトロント暮らしを車の両輪にたとえると、語学学校通いが右輪だとしたら、左輪はホームステイでの生活だ。橋口さんのホストファミリーは、郵便局に勤務するホストファザーとパートタイムで働くホストマザー、大学生の21歳の娘と20歳の息子の4人家族。

この「カナダの典型的なクリスチャンのとても明るい一家」との暮らしは、とにかくおしゃべりと笑いが絶えない。夕食後も、毎晩10時ごろまでその日あったことなどを家族で話す。ときには息子が奏でるピアノにみんなで耳をかたむけることも。

食事中は笑いが絶えない。この日は遊びに来ていた親戚の女の子も加わって、いっそうにぎやかに。

「ホストファザーのブルーノはフランス語圏出身のカナダ人、ホストマザーのアンジェラはルーマニアからの移民です。ふたりとも英語はネイティブではないので、わかりやすい英語を話すんですが、子供たちふたりの英語は早口で聞き取りにくい。けれど、『セツ、わかった?』と気遣いながら話してくれるので何とか理解できます」

先日、はじめて家族と一緒に教会に行く機会があった。
「聖歌隊のハーモニーがとにかく感動的で素晴らしかった。私も一緒に歌ったんですが、なんだかとても心が清められる気がして…。ふと日本の家族のことを思い出したら、とたんに涙が止まらなくなってしまったんです」  それはホームシックとも少し違う、家族への心からの愛情と感謝の気持ちだったという。

橋口さんの部屋。カーテンの代わりにカナダの国旗がかけてあるのがなんともユニーク。

いくつになっても英語の勉強と 留学を続けていきたい

学校に通いはじめて4週間が過ぎ、学校側から「希望があれば中級クラスに推薦するが、どうする?」と打診を受けた。
「『お願いします』と答えた手前、今、かなり本気で勉強中です。自室ではずっとFMラジオで英語を聞いているし、とにかくひとつでも多く単語を覚えようと必死です」
もともとは、3か月間のトロント滞在のうち2か月は学校に通い、残りの1か月はトロントの町を見てまわったり、近隣への旅を楽しむつもりだった橋口さん。しかし、1か月通ってみて、学校へ通っていたほうが英語は上達するし、毎日が楽しいことがわかり、今では残りの1か月も学校に通いたいと考えている。そして最近、もうひとつ心に決めたことがある。

夕食後、毎日30分から1時間が宿題の時間。辞書をめくって用例や解説を確認。

また働いてお金をためて、またカナダに来よう――
「私みたいに海外に行ったことがなくても、お金がなくても、知り合いが現地にいなくても、英語が上手でなくても、留学はできます。『なんとかなるさ』の精神で、とりあえずチャレンジしてみてください。本当になんとかなりますから」と、橋口さんは笑う。

実際に経験した人間だからいえる、実感のこもったひと言だった。

トロントから車で3時間のアルゴンキン州立公園にて。「紅葉の時期にまた絶対来ます!」

橋口節子さん

福岡県/橋口節子さん51歳

1955年生まれ。高校卒業後、通訳ガイド外語学院の専門コースで英語を2年間学ぶ。現在は福岡市で夫と25歳の息子、22歳の娘の4人暮らし。2006年4月に事務職を退職し、同年7月17日から2か月の予定でトロントの英語学校に通う。趣味は旅行と音楽鑑賞。