プリンセス・ダナエと聞いてウィーン分離派の代表的画家クリムト、あるいはラファエル前派のエドワード・バーン=ジョーンズによって描かれた、美貌と官能の王女ダナエを思い浮かべるのは、ダナエが日本人にとってヴィジョンが決して豊富といえないギリシア神話を代表する人物だからだろう。
船内に足を踏み入れると、各デッキの回廊にクリムトらの複製画がディスプレイされているのに気づく。船名が想起させるイメージと19世紀末絵画とが交錯するのも計算のうちなのだということがわかってくるのである。
命名は現在のオーナーの下に置かれた1996年に行われたものだが、建造は1955年、すでに半世紀の船齢を刻む歴史ある船だ。当初、貨物船として英国〜オーストラリア航路などで活躍したのち、1974年に客船に転換される稀有な経歴を経て、現オーナーがマネジメントを受託するクルーズ会社「クラシック・インターナショナル・クルーズ」の客船として1996年にデビューを飾る。このとき1000万ドルの巨費が投じられ完全にリファービッシュされている。最近もスイートルームを設置する大がかりな改修を2006年に受けたばかりという。
ポルトガルから来航したクラシックな美姫〜プリンセス・ダナエ〜
Chapter.1 ロマンチックなギリシア神話の世界へ
横浜港大桟橋埠頭につけるプリンセス・ダナエ(2007年2月26日撮影)。1万6,500トン、乗客定員640名。
ギリシア神話の王女の名にちなむ。2006年にもリニューアルされ、この船がもつ歴史を大切にする心配りを随所に見てとれる。
クラシックライナーらしく、落ち着きのある船内ライフがコンセプトのひとつである。
最上階デッキにある最上級ベランダ・スイート。2泊3日のクルーズで700米ドル前後とリーズナブル。
ポルトガルから来航したクラシックな美姫〜プリンセス・ダナエ〜
Chapter.2 乗客を虜にするきめ細かなサービス
料理は正統のフレンチをはじめとしたスタイルで供される。
ジュピターデッキ前方に位置するレストラン、最大394席収容可能。
ジュニア・スイート。リスボン発着モロッコクルーズでは2泊3日で455米ドル(2007年8月)。
船尾に翻るポルトガルの国旗。船籍は大西洋に浮かぶマデイラ諸島。
クラシックな伝統客船ということがこの客船のセールスポイントである。本船の客室マネージャー氏によれば、大きすぎる当世流メガシップではカバーできないきめ細かなサービスを提供することをポリシーにしているという。今回のクルーズ旅客のうち実に8割がリピーターだそうで、いったん船上の客となった者を虜にする魅力があるのだとアピールする。
ダナエ姫の横浜寄港は今回が初。往路で「ライジングサン」、復路で「サムライ」の名を冠した中東・アジアクルーズの一環でやってきたもの。2月26日の入港時には歓迎式典が行われ、多くの客船ファンも詰めかけた。
素朴でクラシカルな面影は港ヨコハマの風景とよく似合う。地中海のイメージそのままの真っ白な船体もまぶしい。船籍は大西洋に浮かぶポルトガル領マデイラ諸島。船社の本拠はキプロス。「プリンセス・ダナエ」のほかに3隻のクルーズ客船を擁し、地元欧州を主舞台に走る。洗練、成熟した彼の地のクルーズ界において日々鍛えられているのだろう。地の利を生かしたアドリア海クルーズなどが楽しめそうだ。
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