アズレージョはポルトガル固有の名称で、タイル画のことです。ポルトガルでもアズレージョといったり、タイル画といったりしますが、国立アズレージョ博物館があるくらいですから、ここではポルトガルのものはアズレージョで通します。
タイルを建物の外装に貼ったり、テーブルの天板に敷き詰めたりする技法は、アフリカ大陸北部のイスラム文化が源です。天をつくイスラム教のモスクには、あの幾何学的な模様を限りなく繰り返すタイルが使われており、そのタイルに光が反射することで荘厳な雰囲気をつくりだしています。
キリスト教の拝物主義とは全く反対に、徹底して偶像崇拝を廃するのがイスラムです。モスクががらんどうであるだけでなく、内外装ともに、具象的な表現は一切ありません。その代わりが三角や四角、ひし形など多面的形状と、その彩りです。もちろん形と色には、それぞれ宗教的あるいは哲学的、又は生活上の意味があるのでしょう。
このアラビア文化を源流とするタイルは、古代ローマ以降、スペインやポルトガル及び地中海周辺地域に進入したムーア人などによって普及し、いわばヨーロッパ圏の陶器製造の下地をつくったわけです。なかでもフランダース地域(オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ)とスペイン、イタリアでは、それらが現在の陶芸として、さらには中国や日本との混交により、文化的な発展を遂げています。
タイルの技法はイスラム文化が源
リスボン市内の小高い丘のうえにあるフロンタイラ宮殿の「モンキービジネス」。左端の「ギョロ目猫」は当館の代表的なキャラクター。宮殿は18世紀の大地震を奇跡的に免れて収蔵されているアズレージョは、まるで「鳥獣戯画」を髣髴させる賑やかさで貴重。
リスボン市内から少し外れた高速道路入口の擁壁で、1970〜80年につくられたもの。高さ15m超、幅70〜80mにも及ぶ。写真ではわかりにくいが、この巨大さと色の見事さは、雨の日でもあったせいか、京都加茂川の友禅流しを思い出させた。
ポルトガルで独自に発展していった
ポルトガルのタイルは、これらヨーロッパ諸国とは、いささか異なる展開をして、連綿として今に至るアズレージョ文化を培ってきました。イスラム圏から解放されてしばらくした15世紀ころ、先のフランダースやイタリアなどから職人を招聘して、タイル技術を取り入れたのがはじまりです。
アイデンティティを重視するポルトガル独特の建国の精神からか、導入したものの上に、独自の表現様式と使用対象を編み出したのです。表現の対象はとことん具象化、使用対象は器の世界から大きく飛び出して、教会と商店の建物に徹底利用、このふたつがアズレージョを発展させた土台といえます。
この結果ポルトガルの陶器はあまり世界に名を馳せていませんが、その分安くて、実に多彩な作品が手近かにあります。代表的なものが「キャベツの食器」で有名な風刺画家にして陶芸家のボルダロの作品群です。彼が開いた窯元では、陶芸の概念を一変させる斬新さが漂い続けています。
アズレージョは国の文化的な財産ですから、国立博物館があるばかりでなく、若手芸術家を起用した擁壁や建築など公共施設の作品群、1998年のEXPOを期した地下鉄構内作品集等々、多面的な普及が意識されています。また一時代最大のスポンサーだった教会に残されたアズレージョの数々は、他の国々では見ることのできない、全く別の教会「世界」が広がり、訪れる人々を感動させます。
ボルダオの窯元があるカルダス・ダ・ライーニャの陶芸博物館で見つけた、「子どもの遊び」を一連のテーマにしたかわいらしい作品。ブランコやけんけん、玉入れなどを楽しむ懐かしい子どもの姿が、アズレージョの原点ともいえるアズール(青い)一色で描かれている。
