2006年11月30日フィリピンのビコール地方を襲った超大型台風レミンは、アルバイ県を中心に死者行方不明1000人を超えるという未曾有の被害をもたらしました。アルバイ県のタバコ市にある私の農場に日本人退職者3名を案内しようと、その日、マニラ空港に向かっていた我々は、フライトキャンセルのため2日間マニラで足止めを食いました。3日目にレガスピ空港に降りた我々は、町中のほとんどの電柱と樹木がなぎたおされ、道路のいたるところが土砂に覆われるという惨状を目の当たりにしました。レガスピ空港から約30キロのタバコへの国道は、途中、1キロほどが土石流に埋もれ、通行不能ということで、その日もレガスピに足止めされることになりました。
未曾有の大災害に支援活動実施を決断
屋根の半分が吹き飛ばされた農場。
翌日、同行したフィリピン人に、先行してタバコ市の農場に様子を見に行ってもらい、今後の行動を決定することにしました。午後になって戻ってきた顔面蒼白のフィリピン人から、農場が壊滅的被害を受け、家の屋根も吹き飛ばされ、とても泊まれる状況ではないという報告を受けました。さらに、川沿いのバラックは家ごと海に流され、数多くの人々が学校、教会あるいは被害を免れた知人の家に非難し、食べるものも無く悲惨な状況にあえいでいるということでした。
同行した退職者3名のうち1名が、ぜひ状況を視察したいということで、翌日、くだんのフィリピン人と3名でモータバイクの後ろに分乗し、視察に出かけました。途中、土石流に埋もれた道を1キロくらい歩きました。まだ土石流で埋もれた家を掘り起こす作業が行われており、多くの人が生き埋めになったそうです。さらに山に生える木々はなぎ倒されるか、枝葉を落としており、ふだんは見えないはずの家や景色が見え、一種異様な景観でした。
私の農場に着くと、ほぼすべての樹木は倒れ、屋根の半分は吹き飛ばされ、家のなかのものはすべてびしょぬれで、足の踏み場も無いほどで、生まれてはじめて災害というものを目の前にすることになりました。幸い、屋根の骨組みは無事で、金と時間さえかければ修復可能と判断しひと安心しました。
しかし、政府の支援もなかなか届かないという状況で、周囲の惨状に目をつぶっているわけに行かず、個人的に支援活動に乗り出すことにしました。フィリピン在住の知り合いの退職者を中心にメールあるいは携帯電話で呼びかけ、合計31万7072ペソ(約75万5000円)の義援金を集めることができました。これらの資金により、2006年12月30日より2007年1月2日にかけて、タバコ市のなかでも特に被害の激しかったエリア、バランガイを中心に支援活動を実施しました。
被災地を歩く。
超大型台風の残した爪跡。
いつもの通り雄大なマヨン火山
支援物資の調達、配布は私とフィリピン人の友人で直接やりました。義援金を関連する政府機関あるいは団体に預けても、それが被災者に届くかはなはだ疑わしいと考えたからです。テント200枚、50キロ袋入りの米を75袋、缶詰2,000個、乾ラーメン2,000個、Tシャツ800枚、その他古着を、私の自宅で、約1,300個の袋に詰めかえました。この作業は近所のボランティア約30人の協力を得て行われました。事前にバランガイキャップテンより被災者のリストを受け取り、被災者の名前入りのクーポンと引き換えに被災者一人ひとりに食料入りの袋を手渡しました。テントについては別途、家あるいは家の屋根がなくなった被災者をリストアップし、直接手渡しました。
今回、タバコ市内のスコーターエリア(貧しい人々が政府の土地を不法に占拠して居住している地区)にはじめて足を踏み入れましたが、その規模そしてそこに住む多数の住民におどろきました。ふだんは木々に隠れ、あまり目することもなかったスコーターですが、こんな田舎でもこんなに多くの人が貧しさにあえいでいるのかと、認識を新たにしました。たった1,000個そこそこの食料袋を配ったとしても、ほんの一部の人が無事に正月の食料にありついただけかと思うと、焼け石に水の感をぬぐえません。
スコーターのほとんどは川沿いに広がっていますが、これは河川敷が政府の土地であることに起因するそうです。そして、今回の台風による大量の水、あるいは土砂で川沿いの貧しい住民たちが壊滅的被害を受けてしまったのです。一方、比較的高いところに住んでいる富裕な人たちは痛くも痒くもなかった様子ですが、いまだに道路に倒れたままになっている電柱のおかげで、電気が復旧するのは半年後になると嘆いていました。
レガスピ市からタバコ市に向かう国道は、左にマヨン火山、右に海が広がる美しい道ですが、山から流れ出た土砂に埋もれ寸断されていました。そしてマヨン火山は、そんなことは全く関係なく、いつもの通り雄大な姿を誇っていました。マヨン火山という芸術的景観をつくり出した太古からの自然の営みに比べれば、今回の被害はほんのちょっとした地上のさざ波のような変化であって、これも自然の当たり前な営みの一部でしかないのでしょう。
携帯電話:+63-916-543-2812(フィリピン国内からは0916-543-2812)
Eメール:kazutamishiga@yahoo.co.jp



・写真左上
支援物資の袋詰め風景。
・写真右上
支援物資を配布する。
・写真左下
明るいフィリピン人。
・写真右下
ふだんと変わることなくそびえるマヨン火山。
