各国ロングステイヤーからの現地レポート
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フィリピンゆっくりのんびりその日暮し―「ある朝」

上野勲(いさお)さん、展子(のぶこ)さん(ベナルマデナ・コスタ在住)2008年3月11日掲載

スズメのパン代がばかにならない?

チーン。
「きーみょーむーりょーじゅーにょーらーい。なーむーふーかーしーぎーこー…」
わが家の朝は僕の読経からはじまる。台所の方でおのぶが朝食の準備をする気配がする。
お経を読みながら、「今日はベナルマデナの蚤の市の日だな。行ってみるか。そこをのぞいてから隣町のアロージョ・デ・ラ・ミエルに行って、こっこちゃん(※1)を買ってこようかな。そういえばこの間買いに行ったら、また50セント値上がりしていたなあ」などと考える。
  朝のお勤めが終わり、庭に出るとスズメが左に右に飛び交いながら騒ぎ立てる。庭先の木のなかにあわてて逃げ込むものがいる。ハイビスカスの枝のなかに隠れるものもいる。隣の家の塀の上に一列に並んでこちらの様子を伺っているものもいる。
今日も青空の広がるいい天気だ。
「おはよう。待ってろー」
そういって、おもむろに庭を掃く。それから、裏庭へ行ってひと坪ほどの野菜畑をのぞいていると、「おったァ。ごはんよー」とおのぶが呼ぶ声がする。
庭の白いテーブルにおのぶがお皿を運ぶ。僕はヨーグルトをコップに入れて運んだ。
「手を合わせてください。ご一緒に。いただきまーす」と合掌してから、コーヒーをゴクンと飲む。
「あーうめー!」
「おいしいわねえ!」
わが家の朝食はこの形が定着していて、毎朝こんなふうにはじまる。
ちなみに、「いただきます」のいい方は、孫のひかるとみーちゃんが幼稚園で教えられた習慣をわが家に持ち込んだもの。孫たちは小学生になった今も一時帰国の折にまだやっているので可笑しい。
コーヒーを飲みながら待たせてあったスズメにパンをちぎって投げてやる。
1メートルほどのところで、パンくずに群がって争いながら食べている。あるものはくわえて逃げ、あるものはそのスズメを追いかける。姿が見えなくなるほど遠くまで飛んでいくものもある。その場で平気で食べているものもいる。
およそ30羽ほどもいるので、スズメのパン代は家計に計上しなくてはならないほどだ。

我が家の阿弥陀さんは京都西本願寺から2万円で買われてきて金魚鉢のなかに。「心配するな。お前たちの気持ちはわかっているから、安心してまかせておきなさい」といつも見守ってくれている。身体はちっちゃいが心の広いありがたい仏さんだ。

我が家の阿弥陀さんは京都西本願寺から2万円で買われてきて金魚鉢のなかに。「心配するな。お前たちの気持ちはわかっているから、安心してまかせておきなさい」といつも見守ってくれている。身体はちっちゃいが心の広いありがたい仏さんだ。

逃げないで食べていれば、たくさん食べられるものをといつも思う。

逃げないで食べていれば、たくさん食べられるものをといつも思う。

朝食にはたっぷりのフルーツを

朝食のメニューは一年中ほとんど変わらない。コーヒーにビスケット一枚。アホパン2、3個。ヨーグルトとオレンジ、ナシ、リンゴ、アボカド。ときとしてキウイ、マンゴウ。それに季節もののサクランボ、イチゴ、イチジク、モモ、ビワ、チリモヤ、カキなどが加わる。
ヨーグルトは10年ほど前に行きつけの床屋でいただいたカスピ海ヨーグルトで日本から連れてきた。ここへ来て日本と行ったり来たりするときも、いつも荷物に入れて連れて歩いて中断したことがない。
  アホパンは卵半分ほどの形のパンに、ニンニクをすり込んでからオリーブオイルでスナック風にカリッと揚げたものだ。スペイン語ではニンニクのことを「アホ」という。だからこれをアホパンと名づけて呼んでいる。
ちなみに、メス牛は「バカ」。オス牛は「トロ」子イワシは「ボケローネス」。「エロスキー」という大型スーパーがあって、「ビンボー」という会社のパンは僕たちの常食だ。いまだにスペイン語がチンプンカンプンの僕も、これらの名前はすぐに覚えた。
  チリモヤは日本では知らなかった南洋系の果物、である。握りこぶしほどの大きさのものが中心でマラガ周辺でもたくさん栽培されている。緑色をしているので、ここへ来て最初の半年くらいは野菜だと思っていた。ある日、知人宅でごちそうになったらこれがすごく甘い。それ以来わが家の食卓の常連となっている。
  ついでながら、朝食には出ないがデザートに欠かせないメロンが特筆ものだ。形も大きさもラグビーボールのようで3ユーロほど。何千円もする日本の高級マスクメロンも顔負けなほどおいしい。

南スペインに降り注ぐたっぷりの太陽の日差しを浴びながらいただく朝食。

南スペインに降り注ぐたっぷりの太陽の日差しを浴びながらいただく朝食。

今日は何をして過ごそうか

ゆっくり朝食をとりながら、こんな会話が続く。
「今日はパロマ公園の蚤の市の日だから行ってみようか」
「それじゃあ、魚の受け皿探してみようかな」
「ランプおじさん、今日は来てるかなあ」
「もう、店閉めたんじゃない?」
「売れてなさそうだったからなあ」
「暑くて大変だっていってたし」
「この間のあれ、売れちまったかなァ」
「あれって?」
「ほら、あれだよ」
そのうち、どちらからともなくいう。
「さて、そろそろ出かけるか」
それから、「手を合わせてください。ご一緒に。ごちそうさまでした」といって片づけがはじまり、ほぼ1時間近い朝食がこうして終わる。

(※1)
こっこちゃん…にわとりの丸焼きのことで。店頭で売っている。なかなかおいしいのでよく買って帰る。来た当時は6ユーロであったが、その後3回ほど値上がりして最近8ユーロになった。

Photo: Masahiro Ohashi

Photo: Fumiya Kamakura

上野勲(いさお)さん、展子(のぶこ)さんプロフィール

海外派遣教員としてマレーシアで3年間働いた経験から、退職後は海外で暮らしたいと考えるように。1987年にはじめて南スペインを訪れ、1,600万円で3LDKの2階建ての1軒家を購入。2004年7月からベナルマデナ・コスタでのロングステイをスタートさせた。 ビザは「非営利目的の居住査証」を取得。愛称は、おったとおのぶ。

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