各国ロングステイヤーからの現地レポート
過去の掲載

フィリピン慣れたはずの「スペイン流」だったけれど…

上野勲(いさお)さん、展子(のぶこ)さん(ベナルマデナ・コスタ在住)2008年6月25日掲載

「ごめんなさい」といってくれただけ有難い?

「えェ〜。トリモリーノスへまた行くんですか??」
思わず絶叫しそうになった。
「トレモリーノスでマラガへ行きなさいって云われて来たんですよ!! 30分も訪ね歩いてようやくここまで来たんですよ!!
バスで1時間もかかったんですよ〜!!…なんとか頼みます。ね、お願い!」
…最後は哀願調になる。おのぶも隣で「お願いします!」という表情を懸命に演じて援護する。
スペイン語もろくに話せない私たちをさすがに哀れと思ったのか、係りの女性がパソコンに向かって何やら調べてくれる。優しそうな係りのおばちゃんも加わって、なんとかなぐさめようと笑顔で話しかけてくれる。だけどいくらパソコンで調べてくれても、優しそうなおばちゃんがなぐさめてくれても、結論は変わらない。もう一度、トレモリーノスへ行くしかない。
スペインではめったに聞くことがない「ロ・シエント(ごめんなさい)。」といってくれたからまあここは勘弁してやるか。
これは、2008年、1か月後に日本に一時帰国するために、2月はじめ再入国許可証をもらいにマラガ警察署へ行ったときのことである。最初にトレモリーノス警察署へ行ったら、マラガへ行きなさいと書類を手渡されて訪ねてきたのだ。そして今また、受付はここではないからトレモリーノスへ行けという。
こんなことは今はじめて経験したことではない。私たちはこれを「スペイン流」と呼んであきらめの代名詞にしている。もちろんこの代名詞には「こんなに素敵なスペインに住まわせていただいているんだから」という気持ちが含まれていることはいうまでもない。
閉庁時間の2時に間に合うように、私たちはトレモリーノス行きのバス停をめざして大急ぎで引き返すことになった。
ことのはじまりは、以下のとおりである。

マラガ警察署からの帰り道、ゴムの木の大木を見つけて記念撮影。怒りもちょっとおさまった?

マラガ警察署からの帰り道、ゴムの木の大木を見つけて記念撮影。怒りもちょっとおさまった?

2か月の予定が半年たっても音沙汰なし

2008年、一時帰国のときが近づいた。昨年は桜の時期を選んで4月だったが、今年は末娘にふたり目の孫が生まれるというので3月4日にマラガを発って3か月間の予定で日本に帰国することになった。航空券は早々と12月に手配したら、こちらは安心だ。
ところが気になることがあった。スペイン居住ビザが2007年7月に期限が切れて、更新の申請中だったのだ。
2007年の6月にマラガ警察の移民課で更新の手続きをしたとき、「2か月で通知が行くから、そうしたらトレモリーノスの警察へ指紋押印に行きなさい」といわれた。それが、2か月待っても、5か待っても、7か月待っても指紋押印の通知が来ない。辛抱強く待ちさえすればよいことはスペイン流の経験でわかっているのだが、2月の声を聞くようになってさすがに不安になった。
「帰国中に通知が来たらどうしよう」
「通知の有効期限が2か月だったらどうしよう」
「通知を持って行って、もう期限が切れているから更新はできないよといわれたらどうしよう」
不安は次々と広がる。
とうとう思いあまって、マドリッドの領事館に電話した。
「居住ビザ更新の手続き中なんですけど、7か月ほど待たされているんです。3月に3か月ほど日本に帰るんですが、指紋押印の通知が来てから押印に行くまでの期限があるのか知りたいんですが…」
領事館の返答では、「個人的な問題でスペイン側への問い合わせはできませんが、更新中である場合は警察へ行って再入国許可証をもらってください」ということである。
「えエーッ!また警察へ行くんですか?」
頭の中が真っ白になった。
「だって、待たせているのはスペイン側のせいで僕たちのせいではないんですよ。それなのに、また、手続きに行かなきゃならないんですか?」
更新手続きにしろ、再入国許可証申請にしろ、朝早くから並んで、先が見えない不安と言葉の問題から相当なエネルギーが要るのだ。そのうえ一度で目的が達成されたためしがない。
「仕方がない。また、行ってくるとするか…」

トレモリーノス警察署の正面入り口。

トレモリーノス警察署の正面入り口。

早朝8時に訪れて列に並んだのに…

2月になって直ぐ、辺りがまだ薄暗いなか、トレモリーノス警察署の移民課へ行くためにバスに乗った。朝8時到着。移民課正門の前には既に数十人の人の列ができている。9時開門。番号札をもらって庭に入れられてからおよそ1時間も待った頃、番号を呼ばれてなかに入り、椅子に座る。
それから1時間ほどたって、私たちの番号が電光掲示板に表示されてようやく係りの女性の前に座ることができた。
「指紋押印の通知書に期限はないけど、これをもってマラガ警察署に行きなさい」
そういわれて、申請用紙と手数料6ユーロの銀行振り込み用紙を渡される。
「…」
「だって、あんた日本に帰りたいんでしょ?」
「…」
「やれやれ、マラガまで行くのか。それも、6ユーロも払って」
随分ややこしかったけれど、話はここから最初に戻る。1週間後に再入国許可証を無事に手に入れたときの喜びは筆舌に尽くし難い。
これが我が愛するスペインのスペイン流なのである。

トレモリーノス警察署移民課前で順番を待つ人々。

トレモリーノス警察署移民課前で順番を待つ人々。

Photo: Masahiro Ohashi

Photo: Fumiya Kamakura

上野勲(いさお)さん、展子(のぶこ)さんプロフィール

海外派遣教員としてマレーシアで3年間働いた経験から、退職後は海外で暮らしたいと考えるように。1987年にはじめて南スペインを訪れ、1,600万円で3LDKの2階建ての1軒家を購入。2004年7月からベナルマデナ・コスタでのロングステイをスタートさせた。 ビザは「非営利目的の居住査証」を取得。愛称は、おったとおのぶ。

「羅針」Vol.19

スペインについてもっと知りたい人におすすめ
「羅針」Vol.19

特集「南スペインでロングステイを実現!」と題して、下見旅行のモデルプランと、南スペインでロングステイをするメリットとデメリットを解説。上野夫妻のインタビュー記事も掲載。税込み1,000円。

詳細を見る