各国ロングステイヤーからの現地レポート
過去の掲載

フィリピンフィンランド人の友人とトレッキング

上野勲(いさお)さん、展子(のぶこ)さん(ベナルマデナ・コスタ在住)2009年2月12日掲載

日本人第1号「マオッテル会」の会員に!

「…あなたをフィンランド国マオッテル会の名誉ある会員と認め、ここに会員証及びメダルを贈ります。2008年2月3日」
「…同じく、展子を…」
 そして合唱。
「…我らが同胞よ。共にめざせ、進め、未来のために、祖国の勝利得る日のために…」
 日本語風にいえば、フィンランド語でこんなことをいっていたのではないだろうか。
 それは、標高430メートル、ベナルマデナの象徴エル・カラマロ山々頂にあるレストランでのことだった。とにかくおのぶと僕は、何が何だかわけのわからないうちに数名による合唱のなか、出席者全員のサイン入り認定証と会員バッジを受け取った。続いてキスと握手。皆フィンランドの人たちである。私たちがマオッテル会の名誉ある会員に選ばれた瞬間だった。何でも日本人でははじめてで、第一号だそうである。 
 ある日のこと、フィンランド人の友人であるオラビさんとカイヤさん、そしてふたりの友人夫婦、おのぶと僕の6人は、登山口付近に車を置いて山頂めざしてトレッキングを開始した。
 そして、1時間半ほどの後。頂上のレストランには数人の男女がすでに待ち構えていて、拍手で我々を迎えてくれたのだ。頂上に着いた後のことは、まったく予期しなかった出来事である。どうも、オラビさんの企みであったようだ。

会員証の授与。このときはまだ、何が起こっているのかわからなかった。

会員証の授与。このときはまだ、何が起こっているのかわからなかった。

マオッテル会のバッジ。歩いている人の下に、会が組織された1941年の表示がある。私が生まれた年でもある。

マオッテル会のバッジ。歩いている人の下に、会が組織された1941年の表示がある。私が生まれた年でもある。

フィンランドスタイルで山へ

 毎週、日曜日になると、11時きっかりにオラビさんとカイヤさん夫婦が我が家に車でやってくる。ふたりはシニア旅行で知り合ったやはり年金生活者で、オラビさんはとてもそんな風には見えないが81才だ。旅行先で、いっしょにトレッキングをしないかと誘われたのがきっかけだった。エル・カラマロ山を中心に連なっている山々の山腹が、主なトレッキングの舞台だ。
 私たちもふたりに教えられた通り、バストンというスキーのストックにも使える2本の杖とトレッキングシューズ、それにナップサックというフィンランドスタイルで山へ向かう。
 バストン2本を備えるスタイルはフィンランド特有のもので、ふたりの自慢であり誇りでもある。そういわれればイギリス人やスペイン人は何も持たないか、持っていても必ず1本である。だから、トレッキング中遠くに同類者の姿が見えても、杖を2本持っているかどうかで、あれはフィンランド人か、そうではないかが瞬時に見わけられるのだ。
 もっとも、太陽を遮る木陰さえないこの岩っころだらけの山では、夏の強烈な日差しのなか、とてもトレッキングどころではない。オラビさんたちは6〜9月の夏になると、フィンランドがさわやかだからといってさっさと自国へ帰ってしまう。

地中海とべナルマデナを眼下にトレッキング。オラビさん得意のポーズ。

地中海とべナルマデナを眼下にトレッキング。オラビさん得意のポーズ。

休憩中のおのぶとカイヤ。互いに辞書を片手に、共通語のスペイン語に訳して意思の疎通をはかる。

休憩中のおのぶとカイヤ。互いに辞書を片手に、共通語のスペイン語に訳して意思の疎通をはかる。

整備された「センデロ」を歩く

 山腹の要所々々に来ると、トレッキング専用の山道の案内板が設置されている。この山道のことを「センデロ」という。日本で僕はこのような山道を見たことがない。あるいは「○○の細道」とか「○○遊歩道」とかが近いのかも知れない。しかし、トレッキング専用にちゃんと整備されているのだ。R-1とかR-5等と名前が付いていて、自動車道路の地図のように表示されている。普段下から見上げる連山の斜面に、網の目のようにこのようなセンデロが整備されていようとは想像もつかないことであった。ヨーロッパ、スペインの底力のようなものを感じる。
 オラビさんとカイヤさんは、とにかく歩く。日曜日のトレッキング以外にも毎日のように浜辺を1時間以上歩くという。フィンランドから1週間の休暇で来たという彼らの友人夫婦とも、すでに2回いっしょに歩いた。フィンランド人にとっては、休暇で来てもトレッキングは日常的な行動であるようだ。

マオッテル会のメンバーたち。2本バストンはフィンランド人特有のスタイル。

マオッテル会のメンバーたち。2本バストンはフィンランド人特有のスタイル。

日曜日は家族でトレッキングする人の姿をよく見かける。1本バストンはスペイン人。

日曜日は家族でトレッキングする人の姿をよく見かける。1本バストンはスペイン人。

アフリカの山々を眺めながら…

 我が家があるべナルマデナの地中海を隔てた向こう側には、アフリカ大陸が横たわっている(はずである)。
 アフリカまで直線で何キロあるのかは知らないが、普段は見えない。一年に2、3回、寒波が来た冬の寒い日に見えることがあると聞いていたが、私たちは去年まで直接に見たことはなかった。
 この幻のアフリカの山々が、いとも簡単に我々の目の前に姿を現わすようになって1年3か月程になる。はじめの頃、水平線の上に形よく凹凸を繰り返して薄紫色に浮かぶ姿を見て、大いに感動したものだ。トレッキングの行き先によってはヘラクレスの門といわれているジブラルタルと、モロッコ側の一対の独特な岩山を見ることもできる。アフリカの山々は何のことはない、連山の稜線近くまで登れば、何時でも見ることができるのだ。
 ところで、マオッテル会の会員証といっしょに、フィンランド語の新聞のコピーも渡された。オラビさんの説明によると、「1941年、ソ連の侵略から国を守り、取り戻した平和のなかで、フィンランド対スウェーデンの国を挙げたスポーツの対抗戦が行われた。民衆は歩く輪を広げながら行進をして、第一回の大会で勝利を獲得した。歩く輪は、あるときは10万人にも達したという。15キロの距離を2時間20分で歩いたという記述もある。マオッテル会はその勝利を記念して組織された」ということである。 「歩こう会」等と、いつもの軽い調子では恐れ多くてとてもいえそうにない歴史的な組織のようだ。この会のふさわしい日本語の呼び名が見つからない。

地中海に浮かぶアフリカの山々(を撮ったはずなのだが、残念ながら腕前の限界で…)。

地中海に浮かぶアフリカの山々(を撮ったはずなのだが、残念ながら腕前の限界で…)。

Photo: Masahiro Ohashi

Photo: Fumiya Kamakura

上野勲(いさお)さん、展子(のぶこ)さんプロフィール

海外派遣教員としてマレーシアで3年間働いた経験から、退職後は海外で暮らしたいと考えるように。1987年にはじめて南スペインを訪れ、1,600万円で3LDKの2階建ての1軒家を購入。2004年7月からベナルマデナ・コスタでのロングステイをスタートさせた。 ビザは「非営利目的の居住査証」を取得。愛称は、おったとおのぶ。

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