結婚詐欺というのは古今東西どこにでもある犯罪だが、ふつう詐欺師は人を殺さない。人殺しは重罪と知っているからだ。ところがこの物語の結婚詐欺師は、ひとりの女との出会いから運命の歯車が狂い、やがて20人以上もの犠牲者を出した犯罪史上に残る連続殺人鬼になっていく。その狂気のカップルと彼らを執念で追い詰める刑事との物語。1940年代の全米を震撼させた実話の映画化だ。
詐欺師のレイモンド(ジャレッド・レト)は新聞の恋人募集欄「ロンリーハートクラブ」を見てはせっせと手紙を書いていた。戦争未亡人たちは年金で小銭を貯めているが人恋しいのだ。レイモンドには文才があったのでラブレターはお手の物。文通を通じて女をすっかりその気にさせては金を貢がせていた。そんなある日、網に掛かった女マーサ(サルマ・ハエック)には財産がないのですぐに捨てられるはずだった。ところがマーサは自分を愛してくれるなら詐欺師だってかまわなかった。マーサはレイモンドの妹と称して共犯者になった。そしてだました女と暮らすうち、マーサは嫉妬に狂いついにその女を殴り殺してしまう。その瞬間からふたりの殺人行脚が始まった。ふたりは全米を股にかけ次々と犯行を重ねていく。
一方、妻を自殺で亡くした傷心の刑事エルマー・C・ロビンソン(ジョン・トラボルタ)は、ある女性の自殺に不信をいだく。「自殺するには深い訳があるはずだ。そこに何か犯罪の臭いがする」。そして相棒のチャールズ刑事(ジェームズ・ガンドルフィーニ)との執念の捜査が始まる。
背が低く若ハゲだったレイモンドを演じるに当たりジャレッド・レトは頭を剃って撮影に臨んだという。女に振り回されて殺人を犯す小心者をみごとに演じていた。共演のサルマ・ハエックは実際のマーサを演じるには美人過ぎるが、愛する男を独占する為に平気で人を殺すという狂気を演じるにはまさに適役。すごみがあった。彼らを冷静に追い詰める刑事ロビンソン役には、最近すっかり演技派となったジョン・トラボルタ。「サタデー・ナイト・フィーバー」で華々しくデビューしてからちょうど30年、50歳を超えてますます芸域が広がり犯罪者、刑事どちらもこなせる名優になった。
この連続殺人事件の映画化は3度目だが、今回初めて刑事にスポットを当てたことで緊迫した一級のサスペンス映画に仕上がった。監督のトッド・ロビンソンはエンドタイトルで“刑事エルマー・C・ロビンソンに捧ぐ”と記し、作品を祖父に捧げた。
(文:神吉英行 Text: Hideyuki Kanki)
11月10日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
[原題] LONELY HEARTS
[URL] www.lonelyheart.jp
[監督・脚本]トッド・ロビンソン(「白い嵐」脚本)
[出演]ジョン・トラボルタ、ジャレッド・レト、サルマ・ハエック
[配給]ソニー・ピクチャーズエンタテイメント
