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映画/PEACE BED アメリカVSジョン・レノン(2007年12月8日全国ロードショー)

『Peace Bed ジョン・レノンは誰に殺される?』

『Peace Bed ジョン・レノンは誰に殺される?』
2006 Lions Gate Films Inc All Rights Reserved

12月8日という日は、日本人にとっては太平洋戦争の開戦記念日だが、世界の音楽ファンにとってはジョン・レノンの命日だ。どちらも悲しい出来事、暴力が歴史を塗り替えた日である。その12月8日、ジョン・レノン対アメリカ政府の闘いの記録が公開される。しかしこの作品に政治ドキュメンタリを期待すると少し肩透かしを食らうだろう。彼が必ずしも筋金入りの反体制家ではなかったからだ。むしろ、彼がアメリカ永住にこだわった理由と彼の生き方が理解できるかもしれない。

多くのビートルズファンにとってジョン・レノンの結婚はショックだった。オノ・ヨーコは全然美人じゃないし、ビートルズは解散してしまうのだから。ふたりがベッドで裸会見をしたころからジョン・レノンを見なくなったファンは多いだろう。しかし、不幸な生い立ちのレノンには母のように包容力のあるヨーコが必要だった。両親に捨てられ親の愛を全く知らずに育ったレノンは、悲しい思い出しかないイギリスを捨てた。アメリカには平和と自由があると思ったからだ。ヨーコに励まされ自信を得たレノンは平和な家庭の延長として人類平和をテーマに歌うようになる。歌を通じて当時のシンガーや思想家たちと交流する。

1972年FBIから反政府分子とみなされ国外追放処分を受ける。レノンに強い反政府思想があったわけではないが、影響力の大きさゆえに周辺から利用されるのだ。しかし逆境の中では人間は強くなる。彼は家族との生活を守るため、音楽という武器を持って政府と闘う。そして反政府運動の旗手としてさらに世論の支持を受ける。運命の皮肉か、レノンは4年後ついに永住権を勝ち取る。そこにいたる数々の未公開映像と関係者のインタビューは大変興味深い。

なんといっても、この映画でいちばん訴えてくるのは彼が歌うシーンだ。ビートルズ独立後のレノンの歌の内容は大きく変わる。最初のソロシングル「マザー」(1970)で母への想いを歌にして「母さん、行かないで!」と自分を捨てた母に叫び、翌年「イマジン」でユートピアへのあこがれを歌う。さらに1972年には「女は世界の奴隷か」で女性解放運動へと傾倒していく。いずれも音楽史に残る普遍の名曲ではあるが思想は一貫していない。レノンにとって世界平和は家庭平和の延長にあるが、女性解放はヨーコの代弁に過ぎなかったかもしれない。レノンは家族を守る闘いを経て初めてビートルズから脱皮したといえるだろう。残された名曲の数々、その歌詞が物語ってくれる。ところがようやく勝ち取った平和も束の間、永住権獲得から4年後の1980年銃殺されてしまう。暴力果て無きアメリカの悲しい現実だ。

もうすぐクリスマスがやってくる。レノンの名曲「ハッピー・クリスマス」が世界中で歌われる。「War is over」と言うフレーズのため反戦歌として有名だ。しかし、レノンとヨーコはイントロで「キョーコ(ヨーコ前夫との娘)とジュリアン(レノン前妻との息子)に「Happy Cristmas!」とささやく。やはり家族の平和を願っていたのだ。(文:神吉英行 Text: Hideyuki Kanki)

12月8日(土)より TOHOシネマズ六本木ほかにて全国ロードショー

[原題]THE U.S .VS. JOHN LENNNON
[URL]www.peacebed-johnlennon.com
[監督]デヴィッド・リーフ&ジョン・シャインフェルド
[出演]オノ・ヨーコ、ジョン・ウィーナー、ロン・コーヴィック
[配給]ザナドゥー