シークレットサービス・エージェントを主人公にした映画は目新しくないが、本作品は、狙撃シーンを複数の視点から繰り返し見せ、真相を徐々に解き明かして行くという手法が実に斬新な力作。しかも、狙撃事件は序章にしか過ぎず、予想もつかない展開を見せていく。パズルのような謎解きとスピーディーなアクションを併せ持った、独創的でスケールの大きい見事なサスペンス映画だ。
事件はスペインのサラマンカ、大群衆が集まるマヨルカ広場でいきなり発生する。テロ撲滅の国際サミットで演説に立ったアシュトン米大統領(ウィリアム・ハート)が何者かに狙撃されたのだ。現場は一気にパニックに陥る。警護に当たっていたシークレットサービスのトーマス・バーンズ(デニス・クエイド)は、かつて大統領の身代わりで銃弾を受けて休職し、警護に復帰したばかりだった。演説の直前、人気のないはずのビルの窓でカーテンが揺れているのが気になったが、やり過ごしてしまう。勘を取り戻せない不安と緊張のうちに事件が発生し、現場が混乱する中さらに第二の爆破事件が発生する。
ここで狙撃事件を解説するかのように、事件発生前の午前11時59分から数分間の映像が繰り返し流される。それも、それぞれ異なる人物の視点で描かれていく。主人公バーンズの視点に始まり、現場で中継していたTV局の女性プロデューサー、地元の私服刑事、アメリカ人旅行者、アシュトン大統領、さらには意外な人物の視点まで。こうして、次第に事件の全容が明らかになっていく。ところが広場での惨劇はテロ事件の序章に過ぎなかった。
情報が錯綜し混乱を極める中、バーンズはたったひとり真犯人を追い詰めていく。映画の後半は一転してスリリングなカーアクションが展開され、クライマックスまでの切れ味良い演出が痛快だ。複雑に仕込まれたトリックに、バーンズだけでなく観客もまた見事に欺かれてしまう。知的好奇心と爽快感を同時に味わえる作品である。(文:神吉英行 Text: Hideyuki Kanki)
2008年3月8日(土)サロンパスルーブル丸の内ほか全国ロードショー
[原題]vantagepoint
[URL]www.vantagepoint-movie.jp
[監督]ピート・トラヴィス
[出演]デニス・クエイド(「デイ・アフター・トゥモロー」)、マシュー・フォックス(「LOST」シリーズ)、ウィリアム・ハート、シガニー・ウィーヴァー、フォレスト・ウィッテカー
[配給]ソニー・ピクチャーズ・エンタテイメント
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